2017年07月29日・30日に行われた第35回日本美容皮膚科学会総会・学術集会-PREMIUM SESSION -にて
『皮膚科クリニックで行う切らない腋窩多汗症・腋臭症治療』について発表させていただきました。
腋窩多汗症・腋臭症の現状
①腋窩多汗症
- エクリン汗腺の分泌亢進
- 多汗症の有病率は5.8%で医療機関への受診率は6.3%
②腋臭症
- 腋臭症はアポクリン汗腺の分泌亢進
- アンモニアや脂肪、タンパク質、尿素などを含み皮膚表面で分解され臭いを発生する
- 腋臭症は優性遺伝で有病率は10%
各種治療法
原発生腋窩多汗症における治療は、下記の6つあります。
- 消臭・制汗剤
- 塩化アルミニウム外用
- 内服薬(抗コリン剤)
- A型ボツリヌス毒素
- 手術
- 非侵襲的治療
手術
腋窩多汗症の手術は、色々な術式が発案されています。
- ・反転剪除法
- ・稲葉式
- ・クワドラカット
- ・交感神経節遮断法 など
どの方法も皮膚を切開し、汗腺を取り除きます。
皮膚を切開し中で汗腺を剥離する
皮膚を切開し反転させて汗腺を取り除く
皮膚を小さく切開し、汗腺を除去する出典:腋臭症・多汗症 治療実践マニュアル
形成外科 2016 第59巻 増刊号 Step by Stepで進める腋臭症・腋窩多汗症治療
手術治療後ダウンタイム
手術後は、剥離した皮膚が創部から浮いたりずれたりしないようにしっかりと固定(タイオーバー固定)します。
テーピングや包帯を使用して、更にしっかりと固定します。
術後は安静が重要な為、関節運動抑制などの指導を行います。
その後、固定の解除や抜糸などの為に通院が必要となります。
- タイオーバー固定
- テーピング・包帯による固定
- 関節運動抑制の指導
- 通院(ドレーン抜去・圧迫固定の解除・抜糸など約1週間)
タイオーバー固定
テーピング・包帯による固定出典:腋臭症・多汗症 治療実践マニュアル
形成外科 2016 第59巻 増刊号 Step by Stepで進める腋臭症・腋窩多汗症治療
手術治療後合併症
術後には、下記のような合併症のリスクがあります。
腋臭除去に対して最大の効果を求めるほど、術後合併症の危険性が増えます。
- ・テープかぶれ
- ・色素沈着
- ・瘢痕
- ・血腫
- ・皮膚壊死
- ・硬結・拘縮
- ・粉瘤
色素沈着
瘢痕出典:腋臭症・多汗症 治療実践マニュアル
形成外科 2016 第59巻 増刊号 Step by Stepで進める腋臭症・腋窩多汗症治療
ミラドライとは
ミラドライは、切らずに腋窩多汗症・腋臭症を治療する機械です。
多汗症に対して長期的に効果のある機械として唯一FDAの認可を受けています。
ミラドライは、マイクロ波を使用した機械です。
電子レンジと同じような原理で、極性をもった水分子が振動させ、熱を発生させて汗腺にダメージを与えます。
ミラドライのメカニズム
エクリン汗腺・アポクリン汗腺は、真皮深層及び皮下組織に存在します。
ミラドライは、冷却により表皮の損傷を抑えながらマイクロ波の特性を利用し、真皮深層~皮下組織浅層を加熱してにダメージを与えます。
吸引により皮膚を固定し、マイクロ波を照射。伝達経路の極性をもった水分子が振動し、熱を発生させます。
真皮と皮下組織では、マイクロ波の伝導性、誘電率が異なる為、照射されたマイクロ波は皮下組織で反射し、境界付近で電界強度が上がり、熱を強く発生させます。
エクリン汗腺・アポクリン汗腺が存在する真皮深層・皮下組織上層に温度の高いヒートゾーンが形成されます。
照射の間、ハイドロセラミックによるコンタクト冷却を行っているので、表皮・真皮浅層は保護され、発生した熱は皮下組織の下方へ向かって伝導します。
ミラドライの治療の流れ
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専用のスケールを使って汗腺類の分布範囲を計測します。
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計測した治療範囲に合わせて、転写シールでマーキングを施します。
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ワキの複数個所へ局所麻酔をします。
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片側約30分ほどが治療の目安です。麻酔と冷却機能で痛みをほとんど感じることなく治療ができます。
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照射終了後、アルコールを用いてマーキングのインク・潤滑剤を拭き取る。鎮静のために冷却を行います。
術後の経過例
●治療直後
通常、腫脹や紅斑が観察されます。
●治療翌日
マイクロ波照射や局所麻酔によると思われる、皮下(皮内)出血が発現する場合があります。
●治療7日後
<治療7日後>腫脹や紅斑が徐々に消退します。
ミラドライの効果について
組織学的知見
治療前は汗腺が観察できるが、治療105日後では汗腺は認められませんでした。
Clinical evaluation of a microwave device for treating axillary hyperhidrosis. Dermatologic Surgery , 38(5), 728-735,
2012
被験者:腋窩多汗症を主訴とする31人 治療回数:1~3回 麻酔の方法:局所麻酔
発汗の定性検査の一例
治療前は活発な発汗が観察できたが、治療6ヶ月後では発汗はわずかしかみられませんでした。
この症例では、治療6ヶ月後、重量測定法で90.3%の発汗減少が認められた。 1)
被験者:腋窩多汗症を主訴とする31人 治療回数:1~3回 麻酔の方法:局所麻酔
持続性効果の検証
黒い部分は発汗している部分でミラドライを照射した部分のみ3年経過しても発汗していないことが確認出来ます。
脇汗の減少効果
重量測定法で治療一ヶ月後から発汗の減少が認められ、治療一年後においては、平均81.7%の発汗減少が認められました。(n=26) 1)
Clinical evaluation of a microwave device for treating axillary hyperhidrosis. Dermatologic Surgery , 38(5), 728-735, 2012
被験者:腋窩多汗症を主訴とする31人 治療回数:1~3回 麻酔の方法:局所麻酔
腋臭の減少効果
治療一ヶ月後、80%の被験者が「腋臭が気にならない」と回答し、治療二年後においては、フォローアップできた89%の被験者が「腋臭が気にならない」と回答しました。
Long-term efficacy and quality of life assessment for treatment of axillary hyperhidrosis with a microwave device. Dermatologic Surgery, 40(7), 805-807, 2014
被験者:腋窩多汗症を主訴とする31人 治療回数:1~3回 麻酔の方法:局所麻酔
まとめ
ミラドライは切らずに治療ができ、長期的に効果のある治療方法です。
メスを使わない為、傷跡も残らず治療後もすぐに通常の日常生活に戻ることが出来ます。
このように長期的な効果があり傷跡も残らずダウンタイムも少ないミラドライ は、ワキガ多汗症の治療において、非常に優れており自信を持って患者様へ進めることが出来る治療です。
- ・ミラドライは腋窩多汗症・腋臭症に非侵襲的・長期的に効果がある
- ・日常生活の制限なしで受けることが可能
- ・安定した結果を得ることが出来る
- ・自信を持って治療を提案することができる
- ・腋窩多汗症・腋臭症の患者様に対しミラドライのニーズは多い
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