原発性手掌多汗症

皮膚科医による多汗症の治療

エクリン汗腺から必要以上に汗が分泌される状態を「多汗症」といいます。
温度や運動量とは関係なく、日常生活の中で大量に汗が出ることが特徴です。

原因は一つではなく、体質、食生活、精神的ストレス、ホルモンバランスなど、さまざまな要因が複雑に関与し、交感神経の働きが過剰になることで発症すると考えられています。

多汗症の症状は、ワキだけでなく、手のひら・足の裏・頭皮・顔など、人によって現れる部位が異なります。
また、汗が多く分泌されることで雑菌が繁殖し、ニオイが強くなることもあります。

原発性手掌多汗症について

多汗症の中でも、手のひらに過剰な汗をかく症状を
原発性手掌多汗症(げんぱつせいしゅしょうたかんしょう)といいます。

通常、人は緊張したときに手のひらに汗をかきやすくなりますが、原発性手掌多汗症の方は、緊張していない日常時でも大量の手汗が出るのが特徴です。
体温調整のための汗は睡眠中にも出ますが、脳の働きが低下する睡眠中は手のひらには汗をかきません。

そのため、

  • ・書類が濡れてしまう
  • ・ノートやスマートフォンが使いにくい
  • ・人と手をつなぐことに抵抗がある

など、学校や職場、日常生活で悩まれている方が多くいらっしゃいます。
幼少期や思春期頃に発症することが多いとされています。

保険適用になるケース/ならないケース

保険適用になるケース

原発性手掌多汗症と診断された場合は、保険適用で治療が可能です。

保険適用にならないケース

明らかな原因疾患(甲状腺疾患など)による発汗や、精神疾患・薬剤の影響による二次性多汗症の場合は、保険適用外となることがあります

診断・検査について

 原発性手掌多汗症は、日本皮膚科学会『原発性局所多汗症診療ガイドライン(2023年改訂版)』の診断基準に基づいて診断されます。

①明らかな原因がないまま、6か月以上、過剰な手汗が続いている。

②次の症状のうち、2項目以上が当てはまる

  • ・発症が25歳以下である・左右対称性に発汗がみられる
  • ・睡眠中は発汗が止まっている
  • ・1回/週以上の多汗のエピソードがある
  • ・家族歴がみられる
  • ・それらにより日常生活に支障をきたす

治療内容について

これまで手掌多汗症に特化した治療は限られていましたが、手掌多汗症専用の外用薬が保険適用となりました。

塗り薬による治療のため、「これまで治療をあきらめていた方」や「内服薬に抵抗があった方」にも治療を始めやすくなっています。

アポハイド®ローション20%

アポハイド®ローション20%は、日本で初めて原発性手掌多汗症に対して保険適用が認められた外用薬です。
手のひらの皮膚から吸収され、交感神経から放出される発汗を促す物質の働きを抑えることで、過剰な発汗を抑制します。

「アポハイド®ローション20%」の効果

多汗症では、交感神経から分泌されるアセチルコリンという物質が、汗腺(エクリン腺)にあるムスカリンM3受容体と結合することで発汗が起こると考えられています。
アポハイド®ローション20%は、このムスカリンM3受容体を遮断し、アセチルコリンとの結合を防ぐことで、発汗を抑制します。

臨床試験について

12歳~77歳の手汗が強い方を対象とした臨床試験では、1日1回、4週間使用した結果
汗の量が半分以下に減少した方
 アポハイド使用群:52.8%
 プラセボ群:24.3%
という結果が報告されています。

「アポハイド®ローション20%」の使い方

アポハイド®ローション20%は1日1回就寝前に、手のひらに塗るお薬です。お薬を塗った後は、起床後まで手を洗わないようにしてください。

【1】使用前に手のひらの水分をよく拭き取る


【2】両手で合計約5プッシュを目安に出す

※新しいお薬を最初に使うときは薬液が出てくるまでティッシュペーパーなどの上で3~4回ポンプを空押ししてください。


【3】左右の手のひらに均等に塗り広げる

※手のひら以外の部分には使用しないでください。


【4】薬が乾くまで触れず、そのまま就寝

※薬が乾くまで寝具などに触れないようにしてください。


【5】起床後、流水で手をよく洗う

※手を洗った後、再度、薬を塗る必要はありません。

画像出典:久光製薬株式会社 『アポハイドローション20%製品紹介』より

使用後の注意点

  • ・目や口をさわらないでください(さわった場合は、水でゆすぐなどして洗い流してください。異常を感じる場合は医師または薬剤師に相談してください。)
  • ・ 顔や髪の毛などの体に触れないでください
  • ・ 歯磨き、シャワー、コンタクトレンズの扱いなどは避けてください
  • ・ 必要以上に他の人や物に触れないでください

「アポハイド®ローション20%」の主な副作用

  • ・塗ったところに炎症やかゆみ、湿疹などの皮膚の異常がみられる
  • ・口が渇く
  • ・何日も便秘が続き、お腹が張って苦しく感じる
  • ・尿が出にくい、出ない
     など

※症状が続く場合は使用を中止し、医師にご相談ください。

よくある質問(Q&A)

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12歳以上の方が保険適用の対象となります。

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医師の指示に従い、適切に使用してください。

+

個人差はありますが、数日~数週間で変化を感じる方が多いです。

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手のひら専用のお薬です。その他の部位には使用できません。

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必ず事前に医師へご相談ください。

費用(保険適用の場合の目安)

保険診療
アポハイド®ローション20% 707円
  • ※自己負担3割の場合の費用となります。
  • ※初診料などは、別途ご負担となります。

まとめ

原発性手掌多汗症は、決して珍しい病気ではなく、日常生活の質(QOL)に大きく影響する症状です。
2023年より保険適用の治療薬が登場し、「我慢するしかない症状」から「治療できる症状」へと変わりました。

手汗でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。